冷えのぼせとは?
「冷えのぼせ」とは、手や足の先端は冷えているのに、胸や顔、頭だけカーッと熱くなる症状です。
更年期の女性のホットフラッシュと混同されがちですが、更年期に限らず若い女性にも現れることがあります。
寒いのに服を着るとのぼせてしまい、体温調節がうまくできないといったことが生じてきます。
冷えに関する研究では、特別な基礎疾患がないにもかかわらず身体が冷えやすく感じる状態(冷え性)は、女性の約6割、男性の約2割に自覚があるとする報告があります[1]。
冷えのぼせはこの「冷え性」の中でも、下半身の冷えと上半身のほてりが同時に起こるタイプにあたります。
他には
・生理痛
・ニキビ等の肌荒れ
・むくみやめまい、頭痛
・イライラする
・不眠や不安
・多汗
等といった症状が出てきます。
更年期のホットフラッシュとの違い
更年期女性の「のぼせ」は、心理的ストレス、女性ホルモン(エストロゲン)の減少、自律神経のバランスの崩れが関与すると考えられています。一方で、更年期に限らず起こる「冷えのぼせ」は、
・エアコンが効いた生活に慣れてしまっている
・運動不足
・体を冷やしやすい露出の多い服装
等が関与しているとされています。
東洋医学における「冷えのぼせ」の捉え方
東洋医学では、この状態を「上熱下寒(じょうねつげかん)」と呼びます。
本来は全身を巡るはずの「気」が、何らかの原因で下から上へ逆流したままになってしまう状態を「気逆(きぎゃく)」と呼び、この気逆が上熱下寒の背景にあると考えられています[2][3]。
気逆のタイプには、冷えのぼせのほかに動悸や、物事に驚きやすい、焦燥感といった症状を伴うことがあるともいわれます[3]。
また、ストレスや緊張の影響を受けやすい「肝」の働きの乱れが、気を上に昇らせやすくすると説明されることもあります[2]。
興味深いことに、上熱下寒タイプの冷えについて自律神経のバランスを調べた報告では、中枢(瞳孔の反応など)では副交感神経が優位に働いている一方、氷水に足を浸す負荷試験では血管を収縮させる交感神経の緊張が見られたとされ、自律神経系のアンバランスが背景にある可能性が指摘されています[3]。
つまり、東洋医学でいう「気の逆流」という考え方と、現代医学でいう「自律神経のアンバランス」という見方は、異なる言葉で似た現象を説明しているとも言えそうです。
更年期のホットフラッシュと冷えのぼせは、症状の現れ方が似ているため混同されやすいのですが、背景にある要因は必ずしも同じではありません。
ご自身の症状がどちらに近いか整理したい方は、更年期の不調に関するページもあわせてご参照ください。
原因は血行不良?
血行不良やむくみによって体が冷えると、人間の身体は本能的に脳など重要な臓器の温度を保とうとして、末梢の血流をさらに減らして体温を守ろうとします。
すると末梢の冷えがさらに強まり、体幹部との温度差を感じて「のぼせ」を自覚しやすくなる、という悪循環が生じます。
この悪循環は、実際の研究データからも裏付けられています。冷えを自覚する人と自覚しない人を比較した研究では、冷えを自覚するグループは心拍数が高く、心拍変動の周波数解析(LF/HF)から交感神経の働きが優位で、副交感神経を示す指標(HF)が低下していることが分かっています。
さらにレーザードップラー法による測定でも、皮膚の血流量そのものが低下し、皮膚温も低いという結果が報告されています[1]。つまり「冷えやすい」というのは単なる主観ではなく、自律神経のバランスの乱れが皮膚血流という形で客観的にも現れている状態だと考えられています。
対処法としては、首の後ろや腰、手足の末端部のみを温める方法があります。体幹部を温めすぎるとのぼせ症状が出てしまうことがあるので、部分的に温めることを意識するとよいでしょう。
他にもストレッチを行ったり、深く深呼吸してリラックスしやすい状態を作ることも大切です。
腹式呼吸を取り入れるのも一つの方法です。
鍼灸治療による改善例
当院に定期的に通っていただいている女性の一例ですが、冷えのぼせの症状がかなり強く出ておられました。
特に仕事の繁忙期に症状が顕著になる傾向がありました。
症状が強く出ている時は、筋肉の緊張も強く、首周りの筋肉はハリガネのように硬く柔軟性を失っていました。
「首を回すのも辛い」
とおっしゃるくらいに症状が出ることもありました。
施術内容としては、トリガーポイントマッサージがメインです。
鍼は首周りに少し使用する程度で、灸は使用しませんでした。
背中も張り詰めたように硬くなっていましたが、首の緊張がゆるむと背中にも余裕が出てくるため、そこから背中へとアプローチしていきました。
およそ3週間に一度のペースで通っていただいている中で、この方の場合は冷えのぼせの症状が和らいでいる様子がうかがえます。これはあくまで一例であり、症状の現れ方や経過には個人差があります。
参考として、冷え症に対する温熱刺激(お灸)の効果を検討した研究があります。
就寝前にツボへお灸を行う群と、レッグウォーマーを装着する群を4週間比較したところ、お灸を行った群のほうが冷え症の症状や随伴症状が軽減し、手足の温度も維持されやすかったと報告されています[4]。
当院の施術は上記の研究内容そのものを再現するものではありませんが、温熱刺激や血流への働きかけが冷えのケアにおいて研究対象とされていることの一例として紹介します。
終わりに
冷えに関する症状は、男性にも見受けられます。特に昨今は夏はエアコンがないと生活できない環境になっているため、外と中の温度差が大きく、自律神経に負担がかかりやすい状況にあるのかもしれません。
セルフケアとしては、前述の部分温め、腹式呼吸に加えて、軽い有酸素運動で全身の血流を促すことも一般的に勧められています。こうした自律神経の乱れに関するご相談は、当院でも多くお受けしていますので、気になる方はお気軽にご相談ください。
当院の全体的な施術内容や対応症状については
[奈良学園前の肩こり・首こり専門施術ページ]
で詳しく解説しています。」
参考文献・関連情報
本記事で紹介した研究・学術情報は、冷えおよび冷えのぼせに関する一般的な知見であり、当院での施術結果や特定の症状の改善を保証するものではありません。症状の現れ方や背景には個人差がありますので、気になる症状がある場合は医療機関や専門家へのご相談もあわせてご検討ください。
[1] 新藤和雅「冷え性と自律神経」自律神経 2023年60巻2号 p.71-75(山梨大学医学部神経内科学講座、J-STAGE)
[2] 木村容子(東京女子医科大学附属東洋医学研究所)「冷えのぼせ ~ストレスや運動不足が影響~」時事メディカル
[3] 日本プライマリ・ケア連合学会「冷えのミカタ②-上熱下寒(冷えのぼせ)-」
[4] 坂口俊二ほか(関西医療大学)冷え症に対する灸療法の効果に関する研究、日本温泉気候物理医学会雑誌
