臨床の現場にいてつくづく思うことがありまして。
それは、最近の子供は神経質な子が多いな、ということです。
ここでいう「子供」は未就学児童から高校生くらいまでを指しているんですが、全ての子供に共通して、神経過敏な症状を訴えてくることが非常に多いです。
・イライラしている
・すぐに癇癪を起こす
・夜眠れない
・ぼーっとしていることが多い
・顔色が悪い
・すぐに泣く
・落ち込んでいる
・めまいを起こすことが多い
こんなところでしょうか?
今日は、この様な神経過敏傾向にある子供に対してできるケア方法について解説していきます。
触れ合い不足?スキンシップの重要性
最近の子供には、圧倒的に触れ合いが足りていないような気がします。
肉体的な接触もそうですが、精神的な接触も同じです。
お店で騒ぐ子供を注意すると、親が猛反発する等のSNS投稿が連発し、他人との接触を極力避ける傾向が顕著になりました。
可愛い子供だな、と思って見ていても不審者扱いされる始末。
そうなると他人と関わろうとしなくなります。
しかし人間は社会性を重視する生き物です。
他人の接触を極力忌避する親の行動は、子供の情操教育に影響しているのではないかと考えています。
ですが、子供を対象にした事件が目に止まるのも事実です。
ではどうすればいいかというと、スキンシップです。
スキンシップと自律神経の関係
1 オキシトシン(愛情ホルモン)の分泌促進
スキンシップの重要性を裏付ける最も強力な証拠の一つが、オキシトシン(別名:絆ホルモン、幸せホルモン)に関する研究です。
・効果:
優しい肌の触れ合いは、オキシトシンの分泌を促します。
・生理的影響:
オキシトシンは視床下部にあるストレス中枢に働きかけ、HPA軸(視床下部・下垂体・副腎系)の働きを抑えることで、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌を減少させると考えられています[1]。
この経路は、脳幹の背側縫線核にあるセロトニン神経を活性化させ、不安や緊張の緩和につながるとも報告されています[1]。
これにより、不安の緩和、リラックス効果、幸福感の向上をもたらすとされています。
・活性化のきっかけ:
オキシトシンの分泌を促す行動は、動物界にも共通して見られる「グルーミング(毛づくろい)行動」に由来すると考えられています。マッサージや心地よいスキンシップ、家族との団らんなども同様の効果を持つ社会的な癒し行動として位置づけられています[1]。
・親子の絆:
親が子に触れることで、親子の双方にオキシトシンが分泌され、情緒の安定や信頼関係の構築に役立つと考えられています。
2 自律神経への影響(リラクセーション効果)
皮膚への心地よいタッチングは、自律神経のバランスを整えることが研究で示されています。
・交感神経の抑制:
マッサージやタッチングは、交感神経活動を減少させ、副交感神経活動を増加させる傾向にあります。
・結果:
これは、体がリラックスした状態(ストレス緩和、血圧上昇の抑制など)にあることを示しており、小児鍼の軽い刺激で効果を発揮するというメカニズムを裏付けています。
・触れる速さの重要性:
皮膚には「C触覚線維(C-tactile afferents)」と呼ばれる、心地よさに関わる特殊な神経線維が存在します。
1999年に発表された基礎研究では、腕や顔に速度を変えて触れる実験を行ったところ、秒速約5cmほどのゆっくりとした速度で触れたときに快感の度合いが最も高くなることが示されました[2]。
その後の研究でも、快感が最大になるのはおおむね秒速1〜10cmの範囲であることが確認されています[2][3]。
これより速すぎても遅すぎても、心地よさは下がるとされ、触れ方には一定の法則があることが示唆されています。
逆に、触れる速度が速すぎたり遅すぎたりすると、交感神経が優位になり覚醒水準が上がってしまうという指摘もあります[4]。
3 感覚統合と脳科学的な意義
皮膚は生物が最初に獲得した感覚器官であり、触覚は原始的な感覚として、脳と心身の発達に深く関わります。
感覚入力の調整:
脳科学研究では、肌に触れることが安心感や感覚入力の調整に寄与する可能性が示されています。
これは、子どもが皮膚で環境を感じ取り、その情報を適切に処理するための土台作りになっているということです。
心身の安定:
子どもの頃のスキンシップの量が、大人になってからの情緒安定性や社会性に関わるという報告もあり、タッチングが子どもの心身の健全な発達に関わる要素の一つであることが指摘されています。
小児鍼と自律神経の関係について
小児鍼が対象とする「疳の虫(かんのむし)」の症状が出ているとき、子供の体は交感神経が優位に傾いていたり、交感神経と副交感神経のバランスが不安定になっている状態と考えられています[5]。
小児鍼のような軽い皮膚刺激は、高ぶった交感神経を落ち着かせ、副交感神経の働きを促すことで、心身がリラックスしやすい状態に導くと考えられています[5]。
ただし正直にお伝えすると、小児鍼がなぜ子供のさまざまな不調に対して経験的に用いられてきたのか、そのメカニズムが科学的に完全に解明されているわけではありません。
自律神経への働きかけ、オキシトシンの関与など複数の仮説が挙げられていますが[6]、江戸時代から関西地方を中心に長く受け継がれてきた技術であり、経験的に効果が実感されてきたことから広く実施されてきている、というのが現状です[6]。
当院としても、この点は誠実にお伝えした上で、日々の施術にあたっています。
スキンシップはお互いの歩み寄り
スキンシップは中高生の子供でも効果があります。
とはいえ、これくらいになると親との接触は嫌がるものです。
ですが、スキンシップを図れるということは親子関係が良好であるともいえます。
親からまず歩み寄って、しっかりと子供の悩みを聞き出してあげましょう。
子供への上手な質問方法はこちらの記事をご参照ください。
どこまで生意気を言っても子供は親が好きです。
親から歩み寄られて嫌な子供はいません。
これを機会に一度関係を見つめ直してみるのもいいかもしれませんね。
スキンシップを「治療」に昇華させた小児鍼
ご家庭でのスキンシップは最も大切なケアですが、鍼灸師が行う小児鍼は、この「触覚の力」をさらに専門的に利用した施術法です。
小児鍼が「刺さない」「撫でるだけの施術」で行われるのは、まさに皮膚が持つ最大の感覚器官としての機能を使い、自律神経の調整を目的とした心地よい刺激だけを与えているからです。
当院では、お子様の神経過敏な症状やお悩みに合わせ、長年の経験から培った独自のタッチング技術で、心身の安定をサポートしています。
スクナビコナ鍼灸院奈良学園前では、この様な症状のお子さんもたくさん通われています。
「うちの子はどうなんだろ?」
と疑問に思われましたら、LINE無料相談もしておりますので、ご活用くださいませ。
不登校・思春期のお子さんの自律神経ケアについては
[奈良学園前の不登校・思春期自律神経ケアページ]
で詳しく解説しています。」
参考文献・関連情報
本記事で紹介した研究・学術情報は、スキンシップ・タッチングおよび小児鍼に関する一般的な知見であり、特定の症状の改善を保証するものではありません。お子様の体調や発達に関して気になる点がある場合は、小児科など医療機関へのご相談もあわせてご検討ください。
[1] 「スキンシップと団欒はオキシトシンを介してストレスを解消させる」照明学会誌(J-STAGE)/Uvnäs-Moberg, K. 関連研究
[2] Essick, G. K., James, A., & McGlone, F. P. (1999). Psychophysical assessment of the affective components of non-painful touch. NeuroReport.(山口創「なぜ、タッチがこころと体を癒すのか?」〈身〉の医療 第6号, 2021年より引用)
[3] 桜美林大学大学院 2022年度博士論文「皮膚の特性に基づいた主観的心地よさ及びリラクセーション効果をもたらすタッチング方法の検証」
[4] 山口創、ディアケア「心地よい触れ方のポイント」
[5] 神戸東洋医療学院「小児鍼×鍼灸」解説記事/鈴鹿医療科学大学 鍼灸治療センター
[6] じねん堂はり灸治療院「夜泣き・疳の虫」解説記事
