私は過去の警察官としての勤務と、鍼灸師としての臨床から
姿勢と性格は関係するのではないか?
と考えています。
どういうことかというと
・弱気や神経質な人間は猫背が多い
・横柄であったり自信過剰な人間は体がそり気味である
というような感じです。
今回、姿勢と感情の関係について調べた結果を記事にしてみます。
少し専門的で見慣れない言葉が多いですが、なるべく平易な言葉に言い換えておりますので、ぜひご一読下さい。
姿勢は感情の「結果」ではなく「原因」になり得る
医学・心理学における複数の研究により、「身体の姿勢が脳の感情処理プロセスに直接的な影響を与える」という身体化認知(Embodied Cognition)のメカニズムが明らかにされています。
単に「元気だから背筋が伸びる」のではなく、
「背筋を伸ばすことで、脳がポジティブな感情を生成しやすくなる」
という逆方向の因路が存在します。
これを日常生活に取り入れることで、意思の力だけに頼らずにメンタルステートをコントロールすることが可能となります。
姿勢が感情を支配する医学的根拠
脳と身体は、迷走神経やホルモン分泌を介して双方向に通信しています。
姿勢が感情を変える主なメカニズムは以下の3点に集約されます。
1. ポスチャル・フィードバック仮説
顔の表情が感情を作る「表情フィードバック」と同様に、姿勢も脳に信号を送ります。
根拠
心理学者リスクインド(Riskind, J. H.)らの研究では、うつむき加減の「意気消沈した姿勢」を数分間とらせた被験者は、その後の困難な課題に対して粘り強さが低下し、無力感を感じやすくなることが示されました。
メカニズム
脳の前帯状皮質(ACC)や島皮質が身体の状態をモニタリングし、「この姿勢なら、今は悲しい(あるいは自信がある)状態だ」と判断を下します。
脳(前帯状皮質:ACCや島皮質)が「この姿勢は悲しい状態だ」と判断を下した直後、それは単なる感想に留まらず、
全身の生理状態をその感情に適合させるため
の「実行命令」へと切り替わります。
具体的には、脳内の「感情のループ」が完成し、あなたの思考、ホルモン分泌、そして次に取る行動までもが、その姿勢にふさわしいものへと自動的に塗り替えられていきます。
2. 認知バイアスと記憶のフィルタリング
端的に説明すると、現在の姿勢によって引き出される記憶が変わる、というものです。
根拠
ミハラク博士(Michalak, J. et al., 2014)の研究では、猫背の姿勢で歩くグループと、背筋を伸ばして歩くグループに単語を覚えさせたところ、
猫背のグループはネガティブな単語をより多く思い出し、
背筋を伸ばしたグループはポジティブな単語を多く思い出す
という結果が出ました。
つまり、猫背の状態では、脳に「失敗・拒絶・悲しみ」といったネガティブなキーワードが入力された状態になり、ポジティブな記憶へのアクセスがブロックされます。
逆に背筋を伸ばすと、成功体験や前向きな情報が想起されやすくなります。
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出典: Michalak, J., et al. (2014). “How we walk affects what we remember: Gait modifications through biofeedback change negative cognitive bias during memory recall.” Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry.
3. ホルモン分泌とストレス反応
「姿勢が、血中のホルモン濃度や自律神経のバランスを物理的に変える」というメカニズムです。
仮説(注釈:再現性について議論あり)
エイミー・カディ(Cuddy, A.)らの研究では、2分間の「パワーポーズ(堂々とした姿勢)」がテストステロン(自信を高めるホルモン)を増やし、コルチゾール(ストレスホルモン)を減らすと提唱されました。
現在の知見
その後のメタ分析では「ホルモン値への影響」については限定的であるという見解が強いものの、
「主観的な自信や自己肯定感の向上」については一貫して高い効果
が認められています。
姿勢が感情を決める、わかりやすい具体例
これを理解するために、以下の2つの姿勢の自分を想像してみてください。
猫背
PC作業で長時間背中を丸め、もしくはスマホを覗き込んで首を前に出している状態だとする。
脳はこれを「防御姿勢」と捉え、「今は不安な状況なのだ」と判断し、些細なミスでも過剰に落ち込みやすくなります。
胸を張る
あえて胸を張り、肩甲骨を寄せて視線を数センチ上げます。
すると、肺が広がり呼吸が深くなります。
深い呼吸は副交感神経を刺激し、脳に「リラックスして良い」という信号を送るため、自然と心拍数が落ち着き、前向きな思考が働き始めます。
実践ガイド:感情をハックするための3ステップ
医学的知見に基づき、日常で即座に実行できるアクションプランを提示します。
ステップ1:「身体のモニタリング」を習慣化する
1時間に一度、自分の姿勢をチェックしてください。
「顎が前に出ていないか」
「肩が内側に入っていないか」
を確認します。
これだけで、無意識のネガティブな感情ループを断ち切るきっかけになります。
ステップ2:2分間の「アップライト・ポスチャ」
ポスチャ(Posture)とは「姿勢」や「身体の構え」を意味します
不安や焦りを感じたら、椅子に深く腰掛け、背骨を一つずつ積み上げるイメージで背筋を伸ばします。
視線は水平よりわずかに上に固定してください。
ポイント: 胸骨(胸の真ん中の骨)を3センチ上に引き上げる感覚を持つと、自然に理想的な姿勢になります。
ステップ3:歩行パターンの修正
歩くときは、視線を足元ではなく、5〜10メートル先に向けます。
ミハラク博士の研究が示す通り、「弾むように、胸を張って歩く」だけで、脳はポジティブな情報を選別して受け取るようになります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
姿勢と感情の関係を少し専門的に調べて、なるべく簡単にまとめてみました。
今後の生活の参考にしていただくと、とても効果的なセルフケアとすることができると思います。
以下にもう一度この記事の内容をまとめておきます。
これまで見てきた通り、姿勢と感情の関係は「心が体を変える」という一方通行ではなく、「体が心を作り替える」という双方向のメカニズムに基づいています。。
1. 脳は「体の形」から今の感情を判断する
脳は、常にあなたの姿勢をモニタリングしています。
猫背になれば「今は不安な状況だ」と判断し、
胸を張れば「今は自信を持っていい状態だ」と判断を下します。
感情は、あなたの意思よりも先に、物理的な「身体の構え(ポスチャ)」によって決定されているのです。
2. 姿勢が「記憶のフィルター」を切り替える
猫背でいることは、脳内の検索エンジンに「ネガティブ」というキーワードを固定入力しているのと同じです。
背筋を伸ばす(アップライト・ポスチャ)ことで、ポジティブな記憶や前向きな気持ちが湧き出てきます。
3. ストレスは「物理的」に制御できる
姿勢を正すことは、単なる精神論ではありません。
肺を広げ、深い呼吸を確保することで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し、自律神経を整えるという、極めて物理的・化学的なメンタルケアです。
参考文献・データソース
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Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry (2014): 姿勢と記憶のバイアスに関する研究。
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Psychological Science (2010): パワーポーズと自己効力感に関する初期研究。
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Health Psychology (2015): 姿勢がストレス下での自己評価や気分に与える影響についての調査。
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Nair, S., et al. (2015): “Do slumped and upright postures affect stress responses? A randomized trial.”